旅の苦労は金で買え

もう人生も折り返しだし、若いころできなかった一人旅の苦労を買ってでもしてみた記録とか

1ドル札とスタンプと社会運動

2018年4月にシアトルに出張に行った際、おつりでもらった1ドル札にこんなものが混じっていました。

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普通の1ドル札に赤いスタンプが押してあるのが分かります。書かれているのは、

STOP THE ATTACK ON VOTING RIGHTS

翻訳すると「選挙権の侵害を止めよう!」といったところでしょうか。上のスタンプで検索すると、以下のサイトが真っ先にヒットします。

www.stampstampede.org

彼らは、紙幣を媒体として活用する非営利団体のようで、賛同者は10ドル程度のスタンプを彼らから購入し、紙幣にスタンプを押してそれを流通させることで活動に貢献できる。。。といったもののようです。

ちなみに、この活動の背景にあるのは2010年の「シチズンズ・ユナイテッド判決」と呼ばれる最高裁判決のようです。この判決により、企業や特定の団体、個人が無制限に”政治資金管理団体(PAC)”に対して”献金を行うことができるようになりました。PACは候補者本人や政党とは、建前上は独立した団体ではありますが、あつめた資金をCMや広報活動に使えてしまうことから、結局は特定の候補者、政党を大きく利する結果となります。

blogos.com

彼らは、この判決を覆すことを目標としているようです。彼らの主張には「選挙権行使の公平性」も当然含まれています。House of Card というドラマをご存じでしょうか。

www.netflix.com

このドラマの中で、主役のフランク・アンダーウッドが自身の選挙に不利な地域の投票所を、テロの危険性を理由に閉鎖する。。。というシーンが出てきます。これうした妨害はアメリカ国民とってはリアルなのでしょう。実際、2012年にはアフリカ系アメリカ人は白人に比べて投票するまでに2時間を要した。。。という事例があるようです。すげーな、アメリカ。。。

で、ひとまずアメリカでの選挙権がない私からすれば、こうしてアメリアの現実を知ることしかできないわけですが、「紙幣をメディアとして活用する」という彼らのアイディアは面白いなと思ったりしたのが、この記事を投稿するきっかけです。

ただ1点、疑問があります。「紙幣って意図的に汚していいんだっけ?」。

こんな質問は彼らも想定内であるようで、FAQには1番に回答が掲載されています。

Is it legal?

Yes! It’s legal to stamp political messages on US currency. Many people assume that it’s illegal to stamp or write on paper currency at all, but that’s not the case. There’s a provision in the law that states it’s only illegal to deface currency “with the intent to render the bill unfit to be reissued.” Because we want these bills to stay in circulation, it’s legal. We’re lucky because the U.S. is actually one of the only countries with language like that. You can read our lawyer’s legal opinion on the matter here.

https://www.stampstampede.org/faq/

上には、「紙幣の価値を変えるような改ざんをしたり、商行為を行わない限り合法」とのことです。ただし、「汚れた紙幣は中央銀行で回収されてしまう」可能性があるので、できるだけ「汚らしくならない」ようにスタンプを押すことが推奨されているようです。

では、日本はどうだろう?

さすがに、日本じゃできないよな。。。と思い、Wikipedia (ものぐさですんませんww)を見てみました。

貨幣損傷等取締法 - Wikipediaによれば、貨幣に関しては当該法律の対象となるが、紙幣に関しては、この法律の適用外とのこと。

従って、日本銀行券(いわゆる紙幣)は本法の対象外である。貨幣の場合とは異なり、2015年現在、日本銀行券を損傷することそれ自体を罰する法律はない。国立印刷局では「法令上、直ちに違法な行為とは言い切れない」との見解を示している。ただし、違法ではないが、傷みの激しい紙幣や、書き込みや印字が加えられた紙幣は、真券かどうかの判断がつきにくくなり、ATMや自動販売機で使えなくなるなどの支障もありうるため、「みんなで使うものですから、大切に使ってください」との要望を示している[1]

そういえば、ときどきメモが書かれた1000円札があったり、マルサの女では1万円札に印をつけてたりもしたけど、あれ自体は違法ではないのですね。

そうすると、日本でも紙幣を使った市民運動が今後出てきたりするのだろうか。いや、日本のような相互監視、同調圧力の強い国では無理だろうなぁ。。。

。。。と、たまたま発見した1ドル札から、当Blogの趣旨とは関係ない話に発展してしまいました。